murniramli

インドネシアにおける住民参加に基づく高等学校の改善に関する研究

In Manajemen Sekolah, Pendidikan Indonesia, Pendidikan Jepang, Penelitian Pendidikan on Januari 3, 2009 at 8:27 am

Paper presented at Chubu Kyouiku Gakkai 56th, 2007 at Aichi Kyouiku Daigaku

インドネシアにおける住民参加に基づく高等学校の改善に関する研究

Murni RAMLI*

Abstract

Promoting the school to become an open institution with greater transparency is currently a popular issue in the world; going along with the issue of regional autonomy in managing the local education system.  Following this paradigm, the school administrator has to change the style of management; by involving more participation of the stakeholders. The community participation is one of the biggest issues which is  argued as the best solution to reform the school.  However, to change the management from bureaucratic to participative one is not easy for schools in Indonesia which have been fully centralized for long time.  This research studies these phenomena by analysing the policy of School Committee (Komite Sekolah) and Educational Board (Dewan Pendidikan ) as tools to implement School based management (Manajemen Berbasis Sekolah) which was promoted following the Regional Autonomy Law in 1999, as well as conducting interviews with the school administrators and stakeholders in order to capture the implementation of this bodies at educational level.  The main finding of the research shows that although the percentage of participation remains low in some schools, others tend to be more accountable to answer the demand of stakeholders.  Moreover, the existence of Komite Sekolah is still questioned due to the fact that, as some cases showed; Komite Sekolah is merely considered as a legitimate body functioning only to obtain subsidy from the government or be intent on financial support for the school’s operational system. On the other hand, Dewan Pendidikan could not work properly due to some political influences.

Keyword : school based management, management participation, school committee, educational board, community participation

はじめに

本稿は、地方自治法制定によって構想された学校基盤経営 (Manajemen Berbasis Sekolah :以下MBS)に基づく学校改善のために設立された学校委員会(Komite Sekolah)及び教育協議会(Dewan Pendidikan)の役割に関する政策及び事例を分析し、インドネシアにおける「住民参加」と学校改善の特質を明確にすることを目的としている。住民代表機関としての学校委員会及び教育協議会は、インドネシアの中等教育改善に資するのか、また地方教育及び校区によって住民参加は効果的に受け止められるのかを明らかにする。

また本稿では、インドネシアにおける住民参加の効果を評価するモデルを構築し、今後の学校改善をめざしたい。加えて、住民参加の受容を改善し、学校委員会及び教育協議会の権限・責任を地域に位置づけることを目的とする。考察にあたっては五つの地方における高校の校長、教員、生徒会代表、行政管理者、それぞれにインタビューを行い、1)学校と地域との連携、2)学校と政府との連携、3)学校教育活動を決定する過程、4)教育関係者(stakeholder)の役割の四つの項目について考察する。

インドネシアにおける「住民参加」とは、教育関係者間の協働であり、二つの法律的な教育機関、つまり「学校委員会」と「教育協議会」の執行者及びメンバーの代表による参加を意味する。教育関係者とは保護者、教育家、宗教家、教育専門家、企業家、教職員、生徒、卒業生、土地の有力者などを含める言葉である。

そこで分析手法として、学校委員会及び教育協議会の役割を分析するため、Reimers氏[1] (1)及びShaeffer氏[2] (2)の教育に対する住民参加の次元や度合いを評定するマトリクス・議論を基本的に援用し、インドネシアの取り組みを分析する。

インドネシアにおける学校改善のための住民参加の位置づけ

地方分権化を取り入れている国家教育方法をみると、インドネシアの教育事態の変遷が多くみられる。それは、a) 地方教育経営に関する人事管理、予算、管理方法、b)学校組織運営、c)学校及び地域の特徴を生かした教育課程づくり、d)地方教育及び学校への住民参加の導入などというものである。

2005年ー2009年の国家教育省の戦略的国家教育計画(Renstra Pendidikan Diknas 2005/2009)における中等教育計画に関して、三つの重要な目標があり、-中等教育へのアクセスの向上、地域の特徴を生かした学校づくり、国際レベル国立学校づくりということである。

一点目については、2005年には小学校就学率は93.2%まで達成することができたが、中学校の場合は65.2%、また高校に進学する中学生では41.7%であった(3)。この低い就学率は、SMERU研究者によると次の三つの理由であるという。1)生活消費の高さ、2)子どもの能力・学力の低さ、3)宗教的な背景(4)。

その問題を解決するために、様々な政策が遂行されており、例えば、リモート地方で学校施設を設置し、非常勤教員制を行い、生徒への特別支援 (Bantuan Khusus Murid)、教員への特別支援 (Bantuan Khusus Guru)などが行なわれている。しかし、それらの努力にもかかわらず高校の就学率は今までも上がらず、ドロップアウトする生徒たちも次第に増えている。

その理由は、1997年からの経済危機による影響が強い。すなわち、家庭の出費が多くなってきたため、子どもの教育を考えているような余裕のある親は少ない。というのは、家族の生活を営むために重要なものは、衣・食・住など根本的なものだからであり、教育は二次的に必要とされるためである。

このことから考えると、支援とは、学校、生徒、教員などだけに行なうことではなく、家庭に対する支援も必要ではないかと考えるべきであろう。というのは、十分な日常生活が行なわれるように生活の根底を支援し、それをしっかりと支えると親は子どもの教育を真剣に考える余裕が生じるからである。しかし、この支援を政府だけに委託させることは十分ではないため、住民からの協力が必要となる。

この状況は、独立後、インドネシアでは教育分野より経済分野を発展の第一目的としてきたことに起因し、国家予算から教育へ支出されていた予算は少なかった。その後、教育予算を増加する計画を立て、2004年の国家教育予算では20%に決定された。しかし、この数字は実現不可能と思われる。

それは、発展途上国固有の問題であり、経済の向上か教育の向上かという深刻な選択の問題だといえる。つまり、国としては、教育を支える経済発展を優先すべきか、経済を支える教育を優先すべきかを決定することが難しいのである。ただ、インドネシアでは不均衡な発展をしてきており、社会格差が次第に拡大している。つまり、経済的にみると、政府は大企業に支援しているが、国民の生活を十分に支えていないため、社会格差が発生している。それゆえ、教育分野で、すべての国民のための教育が十分に満たされていない。インドネシアでは50%以上の人々が貧困線以下で暮らしており、教育を受けた人が少ない。そのために、政府は無償あるいは廉価な教育費を設定することが必要だといわれているが、現在、そのような教育機関はほとんどない。その結果、教育はエリート優先になり、国民の間の教育格差も非常に重要な問題となっている。

この問題を解決する一つの対策として住民参加の問題を考えることは重要であると考えた。そのためには学校委員会及び教育協議会の機能を明確にしなければならない。なぜならば、国家予算に余裕がない状況の中で住民参加が国民の教育を保障する補完的役割を負うと考えるからである。

なお、上述のように中等教育就学率が低い理由の一つは、子どもの能力・学力が低いことが考えられる。インドネシアでは各教育段階を卒業するための全国的統一試験があるため、中央から離れた学校で学んでいる子どもたちは良い結果を獲得することが難しい。なぜなら広い国たるインドネシアでは各地方・学校などの教育量及び質を同様に向上させることはできないからである。そのため、学校を卒業するための全国的学力競争を行なうことは不可能である。ただし、学校の状態を測るためには良い方法ではある。

ここで、SMERU調査結果をよくみると、就学した生徒の半分以上が女子であるため、性別的には就学者に男女の相違はない。女子の就学と宗教的な教義は関係があるといわれているが、宗教的な背景で就学率が低くなるという見解は今日の社会においては適切ではない。表1から、就学する生徒の87.30%はイスラム教徒であり、しかも、就学しない生徒の97.3%もイスラム教徒である。インドネシアでは人口の約86%がイスラム教徒であるため、他の宗教と比較することができない。仮に、宗教的な影響を研究するならば、イスラム教徒と他の信徒との比較が必要なはずである。

表1.就学する/ 就学しない主な理由

要因 就学する 就学しない
全国統一学力テストの点数 (EBTANAS) 32.41点(合計) 27.71点(合計)
女子 53.51% 64.00%
イスラム教 87.30% 97.30%

注:SMERU研究者の調査により

その上、インドネシアの地域学校はほとんどがイスラム寄宿塾(Pesantren)から始まったという歴史的背景がある。15世紀にはイスラムの若者に対する教育のため、地域には伝統的なイスラム学校が設置されていった。今では、国内いたるところにイスラム学校がみられる(5、59-76項)。したがって、就学しない理由を明確にするにあたって宗教的な理由だけに焦点をあてて研究することは適切ではない。インドネシアにおける宗教は伝統的な文化や習慣を含めて総合的に考察していくべきであり、宗教=「悪」と短絡的に認識すべきではない。逆に、国民の教育アクセスを遂行するための宗教者の努力は非常に重要であり、たとえノンフォーマルな教育機関から開始するにしても、宗教者はすべての住民が教育を受けられるよう目指しているのである。

正直なところ、筆者は学校委員会や教育協議会以上に宗教者の努力の方が現実的な中等教育改善に近いものだと考える。しかし、残念ながら、政府はこの宗教者の取り組みを十分に支援していない。

ところで、上述した二点目の学校改善とは、地域の特徴を生かした学校づくりという計画である。それは地域の経済・文化・政治、管理方法などという特徴を地方の間で競争しあえるように地域学校を改善することである。それに対して、地方での取り組みは様々である。例えばバンテェン州ではイスラム的な地方として、一般学校ではイスラム教の方針を教育課程の中に導入したり(6)、ゴロンタロ州ではトウモロコシが第一の地方農産物であるため、すべての教育段階の教育課程に「トウモロコシ授業」を入れることになっている(7)。このように地方の特徴を生かした学校づくりを達成するためには住民参加が必要になるとともに、生徒は地域のことを学べるように地域住民からの支援が必要となるのである。

しかし、この課題と三点目の学校改善(国際レベル国立学校)とは相反するものだと考える。というのは、国際レベル学校を設置する予算は非常に高く、新たなエリート教育になる可能もあり、さらには、国家教育はどこに向かうのか明確にされていないためである。

結論としては、インドネシアにおける学校改善とは、教育内容だけを改善するにとどまらず、学校組織、運営のあり方、施設・設備、教員の能力・指導力などを含め、特に学校全体のウィークポイントを改善し、不公平な側面を是正することが重要である。ただ、現時点でなおインドネシアには学校改善以前に解決すべき問題が多い。それは、例えば就学率が低いこと、地域の特徴を学校教育課程の中に取り入れていないこと、そして生徒の学力・能力が国際レベルと比較して低いことなどである。まずは、これらの問題点から改善すべきであると考える。そのためにも、住民参加の捉え方を導入しなければならない。

学校委員会及び教育協議会に関する政策と施行

1999年の地方自治化の流れた、学校教育に関する政策としては、まず、学校基盤経営(Manajemen Berbasis Sekolah:以下、MBS)を挙げることができる。この政策は2000年から施行され、学校組織運営の中心となり、校長の権限・責任はすべての教育関係者に配分され、学校改革プログラムを編成するという目的がある。この制度の主課題は、教育関係者の参加にあるが、長期にわたる強力な中央集権的国家であったインドネシアは、官僚的な管理方法を変更することは容易ではない。

したがって、2000年から制定されたMBSは2002年まで学校現場において実践されていることが見られない。そのために2002年では「学校委員会=Komite Sekolah」及び「教育協議会=Dewan Pendidikan」を設けるため国家教育大臣より法令第044号が制定され、この法律に基づき、学校教育という領域には住民参加をいかに取り入れるのかが、または学校基盤経営に関する実施のあり方が明確になってきた。

住民参加という言葉を定義するにあたって、まず「住民参加」とは何かを明確にすることが必要である。地域には広い意味が含まれているため、学校に参加すべき「地域住民」を分類したり定義することは非常に難しい。その上、学校教育に対して間心がある地域住民とは地域の中のどのような存在なのか。2001年度にガーナで行なわれた調査によると、地域の中には経済的及び宗教的な様々な派閥があり、それらを統合することは不可能だと言われている(8)。

「地域住民」またはコミュニティーという言葉は、1955年に定義づけられ、Bray氏は次の五つの区分を議論している:1)地理的コミュニティー、2)民族的集団、3)宗教的集団、4)同様の関心事をもっている集団、5)人類愛に関する集団(9)。

それに対して、これからの地域における学校をどのように位置づけていくか、またそのため、教育を成り立たせている認識をいかなるものとして捉えていくか、とういう問題がある。

インドネシアでは地域住民とは、学校委員会及び教育協議会を意味している。学校委員会は学校の機関であり、教育協議会では教育議論・助言を地方政府に支える機関である。学校委員会は、すべての住民を代表するため 1)保護者、2)地域社会、3)教育界、4)産業界、5)教育専門家、6)卒業生代表、7)生徒代表、8)教職員代表から成っている。この機関では次のような機能をもっている:

1.   学校に対して助言 (advisory)

2.   学校に対して支援(財源・人材)(supporting)

3.   学校の教育成果の評価 (controlling)

4.   行政と学校と地域間の調整(mediator)(10,11,12)。

学校委員会を成立するために、教職員、地域社会、保護者、教育専門家、産業界などから5名を選び、「学校委員会選出委員会」を設置する。この組織は学校委員会の管理者及びメンバーを民主的に選出するために、次の手立てを必要としている:

1.   学校委員会についての説明会

2.   学校委員会の管理者・メンバーの資格を決定する会

3.   立候補者を選抜する会

4.   学校委員会の立候補者を新聞・ラジオなどで公表すること

5.   学校委員会の管理者及びメンバーの立候補者を決定する

6.   学校委員会の管理者及びメンバーを選出すること

7.   選出の結果は校長に伝えられ、校長が校長により法令を作成すること

これら手立ては理想的なことであるため、学校現場では様々な異なる見解と衝突するが、さらに、違う取り組みも認められる。この手立ては最初の選出だけに使用し、次の新管理者及びメンバーを選出するための責任を今のメンバーはもっている。そして校長による法令は認められなくなっている。このことは学校委員会の自立性だといわれている。

しかし、学校現場での捉え方は政策と一致している場合もあるが、違う捉え方もみられる(表2)。 表2にあるように、公立学校の場合は制定された政策と実践していることは合致しているが、私立学校の場合は多くの相違点がみられる。例えば、SMA Semesta Semarang では学校委員会のメンバーは財団者のみである。なぜならこの学校はトロクのカリキュラムを採用し、学校教育方針を守るため、財団以外の当事者を学校委員会には含まないという[3]。学校委員会および教育協議会との検討委員会者、Suparlan氏により、このような取り組みは認められていない(20)。

MA Al-Haitsamの場合は、小さい学校なので(約100人の生徒)、学校委員会では財団者、保護者、生徒、教職員だけで十分だといえる[4]。しかし、小さな学校委員会とはいえ、学校委員会の機能をほとんど果たしていない。この学校における、学校委員会とは政府からの支援を獲得するための機関である。したがって中央政府及び地方政府からの援助を得るために各学校は学校委員会との同意しなければならない。それゆえ、それ以外の機能が適切に遂行されていない。

SMA Hidayatullah Semarang の場合は、私立高校であるが、一般公立高校のように学校委員会メンバーはすべての当事者を含め、委員会の機能も適切に果たしている。この学校では、校長のリーダーシップは官僚的なリーダーシップではなく、教育当事者の意見を重んじて、学校組織運営を行なうことになっているということがみられる[5]

ところで、委員会のメンバーではそれぞれの役割が異なる。SMA 2 Madiunの場合は、学校の施設・設備を改善するために卒業生徒が大きく関わる。さらに、「SMA2Madiunの卒業生徒共同」も設置され、IKATAN ALUMNI SMA 2 MADIUNと呼ばれており、非常に良い集団である。SMA Hidayatullah Semarang では、学校財団多くの関わりをもち、保護者の関わりがほとんど認められていない。他の学校では校長のかかわりが大きい。

なお、学校委員会のメンバーは学校内と学校外の当事者という二つのグループに区別できる。学校内からのメンバーのかかわりでは校長以外の当事者の関わりがみられない、例えば教員は校長に批判しないし、生徒も委員会に所属するだけであり、意見を発言しない生徒代表が多い。この点について、教員集団、また生徒集団を育成することが重要であろう。

表2.学校委員会のメンバー及び機能のデータ

学校名

学校委員会メンバー

学校委員会機能

財団者 保護者 地域社会 教育界 産業界 教育専門家 卒業生 生徒 教職員 助言 支配 支援 仲介
SMAN 2 Madiun

(一般高校)

P P P P P P P P P P P P
SMAN 3 Madiun

(一般高校)

P P P P P P P P P P P P
SMAN 6 Madiun

(一般高校

P P P P P P P P P P P P
SMAN 1 Madiun

(一般高校)

P P P P P P
SMK Taman Siswa Madiun

(私立職業高校)

P P P P P P
STM PGRI Madiun

(私立職業高校)

P P P P P P P P P P
SMA Hidayatullah Semarang

(私立一般高校)

P P P P P P P P P P P P P
SMA Semesta Semarang

(私立一般高校)

P P P P P
SMKN 3 Jakarta

(国立職業高校)

P P P P P P P P P P P P
MA Al-Haitsam, Bogor

(イスラム高校)

P P P P
SMAN 1 Pangkep

(一般高校)

P P P P P P P P P P P P

注:2007年4月から5月までに行なわれた調査により

さらに、学校外のメンバーは法律的に大きな役割をもっているが、学校教育プログラムに対して、積極的な参加がみられていない。その理由は、主としてのメンバーは多忙な人であるため、委員会の会議・懇談会に参加することも不可能になっている。したがって、学校教育に関する懇談会・会議は相変わらず学校から呼びかけられていることになっている。

その上、委員会の管理者・メンバーを選出する権限は校長及び教職員がもっているため、学校委員会の義務、とりわけ校長及び教員の任務・仕事に対する監督を行なう際、不公平な取り組みがみられる可能性がある。

ところで、四つの機能として学校委員会は-助言、監督、支援、仲介などを実際にいかに行なうのか。事例からみていくと、たとえば毎年新学期の前に校長及び教員は教職員会議で一年間の学校プログラムを編成し、生徒会では生徒代表が生徒に関する活動を話し合うこととされている。そして作成された計画は学校委員会の会議で発表され、そこで実施可能なプログラムを決定する。

四つの機能のうち学校側に最も役立つものは支援である。学校委員会は「寄付機関」とも呼ばれる。すなわち学校教育を実施するための政府からの援助が次第に少なくなってきたため、保護者からの寄付を取り立てることになってきたのである。以前から徴収は学校委員会の役割であった。このような実態から学校委員会に参加を望まない保護者が多くなっている。また、学校委員会で話し合われる議題は次の項目である[6]

1.   学校の年間予算

2.   学校教育活動・イベント、学校祭

3.   奨学金・国家から支援

4.   学校施設・設備の再建及び開発

5.   教員の割り当て量・援助

そこからみると、学校や教員を監督することは学校委員会の義務ではなく、校長及び地方教育局の任務である。そうだとすれば、学校自律性といえるのか疑問が残る。学校自律性は、学校集団と学校委員会集団との構造上の関係から考察してみていくと認められていない。しかし、法律的には、学校側は自由に学校を開発でき、学校委員会がこの自律性を制限することになっている。

ところで、教育協議会は、教育に関する政策・議論を地方政府に伝える機能をもつが、本研究で調査した学校すべてにおいて、教育協議会の効果がまだ得られていない。さらに、多くの地方では、教育協議会は政治的な組織になってしまい、政党間の競争の場となっている。

なお、効果的に実践するため、政府は学校委員会及び教育協議会に特別支援を行い、基本的には国家教育予算を使用しているが、国外からの支援もある。例えば「米国国際開発庁:以下、USAID」は、基礎教育経営プロジェクト(Managing Basic Education Project)、「オーストラリア国際開発庁:以下、AUSAID」は、基礎教育プログラム(Basic Education Program)及びイスラム学校への学習支援プログラム(Learning Assistance Program for Islamic School)、その他世界銀行やユネスコからの援助もある(13,14,15)。

一見すると、国外からの支援は良いものと言われてきたが、援助とともに外国由来の教育理論や政策が浸透し始めている。特に、住民参加に関する政策・施策(学校委員会及び教育協議会制度)、学校組織運営に関する理論(学校基盤経営など)、教育内容(教育段階に基づくカリキュラム:Kurikulum Tingkat Satuan Pendidikan)などの施策は、インドネシアの教育制度に非常に大きな変化をもたらしている。しかし、本当にこれらの施策がインドネシアの教育に適切であるのかについては疑問が残る。

本来は、インドネシアの特徴を生かした教育改善が最も重要であり、中央政府から委譲された政策は、国外からの理論をそのまま踏襲するべきではない。理想的には、インドネシアの教育の現実の中からインドネシアに最も適した改革を模索することが不可欠である。

インドネシアにおける住民参加のモデル

Bray氏は、学校教育への住民のかかわりを表現するものとして「協働=partnership」という言葉が適確であるとしている。協働は責任を同様に分配し、参加者は同程度の協働関係をもつ。一方 「関与=involvement」または「参加=participation」という言葉を使う論者もいる。しかし「関与」または「参加」という言葉は、参加者の間の責任が同程度ではなく、組織者・創立者・主催者の責任及び義務の方が多い(9)。

この定義からみると、インドネシアの学校改善における住民参加とは法律的には「協働」という意味に近いが、現状の実施をみると「参加・関与」の意味に一致している。つまり、学校現場では学校教育の責任・権威などは教職員及び政府のものだと考える保護者・住民が多いため、協働するまでには至っていないと考える。

Bray 氏は、学校運営管理に関する管理者として、「政府が制定する機関」、「父母共同による機関」、「地域及びクラスターによる機関」という三つのタイプを提示している(9)。

学校委員会は学校の組織運営及び学校政策に関する義務をもち、英語では「School Governance Body」と解釈されている。多くの国々では中央政府や地方政府などが学校委員会を法律的に規定している(9,16,17)。しかし、学校組織・学校運営という領域には以前から、保護者会(Parent Association)の役割がみられる。

インドネシアの場合は以前、学校と親の連携だけを重視してきたが、1950年、各学校に保護者・生徒・教員会(Persatuan  Orang Tua, Murid, dan Guru:以下、PMOG)が設立された。しかし、教員の贈収賄行為の増加により、1974年にはこの機関が撤廃された。その後、保護者との共同のため学校教育実施支援機関(Badan Pembantu Pelaksana Pendidikan:以下、BP3)という新保護者会が新たに設立された(18、19、20)。

この歴史を考えると、保護者・住民が参加するための機関は元々政府によって義務づけられた機関であった。分権化の影響を受け、学校と親だけの連携では不十分であると考え、地域住民と教育界、教育専門家、企業家、宗教家、土地の有力者などとの連携をつくることが必要であると考えられるようになった。

しかしながら、学校教職員・管理者がそれらの連携を先駆的に開始することは難しい。結果的に政府が政策・概要を主導し、2002年、学校委員会(Komite Sekolah)が制定された。

この観点から、インドネシアでは学校教育に関する住民の意識や教育力は低く、学校管理者もこの問題についての認識・能力が不十分である。政府主導の政策が多く、またその政策を適切に実践するための学校管理者養成も政府によって進められている。

ところで、学校への住民の参加がどこまで可能か、インドネシアではまだ明らかではない。Reimers 氏及びShaeffer氏の住民協働に関するマトリックスの中に示される教育機能とは次のようのものである。

このマトリックスではRaimers氏によって作成されたものである。Shaeffer氏 によると、住民参加の実践程度として、最低が施設・設備を使用すること、最高が実質的な権限をもち、各段階での意思決定権限をもつことと位置づけられている(1, 2)。

そのマトリックスに基づき、インドネシアにおける住民参加、または学校委員会の現状を評価すると、縦の項目のなかで三つが機能をしている。つまり、資源の活用は(6)の程度。監督は(4)の程度。さらに施設の建設維持は最高の程度である。それ以外のことは中央政府、地方政府・教育大臣によって行なわれている。

なお、住民参加については、元々政府は教育を支えるための力、資源、予算が足りないため、住民が責任を分担することになっている。この観点から考えると住民参加を促進するためには、政府が政治・管理権限を徐々に減らさなければならない。つまり、政府の関与と住民参加は一方が重くなれば一方は軽くなるといいたバランスを保持しなければならない。

しかし、住民参加ついていえば、Raimers 氏が挙げている教育機能に対して、住民は本当に参加できるのか。というのは住民が教育専門家ではないし、教育意識・教育力も高いとはいえない。住民参加を促進するためには住民集団を育成しなければならない。

ここで筆者は、インドネシアにおける住民参加の内容について、表4にある7つの機能を提案したい。各項目について参加の程度を点数化し、さらに政府に求められる対応をまとめた。

これらの機能は学校委員会によって行われる機能であるが、地域の住民・保護者に対して、学校委員会からの報告が重要である。これにより、学校委員会の意識や組織学習を高めることになり、住民・保護者集団及び学校集団も育成することになるだろう。

表3.教育における住民協働に関するディメンション及び程度

教育機能

住民のかかわり

サービス・施設・設備の使用

(1)

会議への出席

(2)

資源の寄贈・寄付

(3)

問題の相談

(4)

配達に参加

(5)

委任される権限及び意思決定

(6)

各段階での真実の権限・意思決定

(7)

政策の編成

C

学校資源の活用

C

教育課程編成

C

教員の雇用・

解雇

C

監督

C

給料の支払い

C

教員養成

C

教科書の配布

C

免許状

C

施設の建設・維持

C

何よりも、インドネシアでは半数を超える人々の教育レベルが低いため、それらの住民の教育意識・知識を育成することが重要である。住民は高い意識・知識を得る機会が少ないため、学校委員会及び教育委員会こそが将来的に重要な機関になるのではないかと考える。

表4.インドネシアにおける住民参加の内容

学校委員会及び教育協議会の機能

程度

政府の対応

人事管理・教員の雇用・停職

(教職員の能力・指導力の向上)

人事管理権限を学校委員会に委譲する
教科書の編成

(教育内容改善)

全国的に採用される教科書を廃止する
教育課程・カリキュラム

(教育内容改善)

全国統一カリキュラムを廃止する

全国学力テストを廃止する

学校施策・学校教育計画

(学校改善)

学校の自律性を促進する。国家カリキュラムを決定、人事管理を行う、全国学力テストを行う
学校評価

(学校問題を解決する)

評価する権限を学校委員会及び教育委員会に委譲する、国家カリキュラムを決定、人事管理を行う、全国学力テストを行う
生徒への支援

(学校へのアクセス向上)

授業料の基準を決定する、国家カリキュラムを決定、人事管理を行う、全国学力テストを行う
学校施設・設備の設置

学校へのアクセス向上

施設・設備を設置する、国家カリキュラムを決定、人事管理を行う、全国学力テストを行う

参考

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13.  Petunjuk Teknis Subsidi Dewan Pendidikan Tahun 2007.  Departemen Pendidikan Nasional, Dikdasmen, Kegiatan Pembinaan Komite Sekolah dan dewan Pendidikan. Retrieved on June,7,2007 fromhttp://www.dikdasmen.org/files/DPKS/PETUNJUK%20TEKNIS%20SUBSIDI%20DEWAN%20PENDIDIKAN%202007.pdf

14.  Petunjuk Teknis Subsidi Komite Sekolah Dalam Rangka Pelaksanaan Studi ” The Improvement of The Quality of Education Service Through Enhanced Community Participation (IQE-CP) Tahun 2007. Departemen Pendidikan Nasional Dikdasmen, Kegiatan Pembinaan Dewan Pendidikan dan Komite Sekolah.Retrieved on June,7,2007 from http://www.dikdasmen.org/files/DPKS/PETUNJUK%20TEKNIS%20SUBSIDI%20KOMITE%20SEKOLAH%20STUDI%20IQE-CP%202007.pdf

15.  Petunjuk Teknis Pemberian Subsidi Hibah Bersaing Komite Sekolah Tahun 2007. Departemen Pendidikan Nasional Dikdasmen, Kegiatan Pembinaan Dewan Pendidikan dan Komite Sekolah. Retrieved on June,7, 2007 from http://www.dikdasmen.org/files/DPKS/PETUNJUK%20TEKNIS%20SUBSIDI%20HIBAH%20BERSAING%20KOMITE%20SEKOLAH%202007.pdf

16.  Pryor, J.  2005.  Can Community participation mobilise social capital for improvement of rural schooling ? A case study from Ghana.  Compare 35 (2) : 193-203

17.  Rose, Pauline. 2003.  Community Participation in School Policy and Practice in Malawi: balancing local knowledge, national policies and international agency priorities.  Compare 33(1): 47-64.

18.  Pikiran Rakyat. 2005.  Timbal Balik Kebutuhan dan Kepedulian. 1 Mei 2005.  Retrieved on June,15,2007 from http://www.pikiran-rakyat.com/cetak/2005/0505/01/hikmah/utama02.htm

19.  Republika Online. 2007.  Mempersoalkan Komite Sekolah. 22 April,2007. Retrieved on June,15,2007 from http://www.republika.co.id/koran_detail.asp?id=290378

20.  Suparlan.  2006.  Prospek Keberadaan dan Peran Sewan Pendidikan dan Komite Sekolah di Masa Depan.  Retrieved on June,15,2007 from http://www.dikdasmen.org/?hal=6&id=6


* 名古屋大学大学院生

[1] 1997年にラテンアメリカにおける教育革新の増進に関するNGOの役割についてに行なわれた研究

[2] 1994年のユネスコの教育計画国際機関局のもの

[3] SMA Semestaの教頭へのにインタビューにより

[4] MA Al-Haitsam の校長へのインタビューにより

[5] SMA Hidayatullah の校長へのインタビューにより

[6]全のインタビューを含む

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  1. Ibu Murni,

    Salam kenal.

    Saya Mardian, saat ini mendapat amanah sebagai Community Development Officer bidang pendidikan.

    Tulisan ini bagus sekali walaupun saya hanya bisa simpulkan dari abstractnya. Apakah ada versi Bahasa Inggris lengkapnya? Saya ingin menyimpan sebagai koleksi referensi dan wawasan bila Ibu berkenan.

    Terima kasih sebelumnya.

    Salam,

    Mardian

  2. Salam kenal juga, Pak Mardian.

    Sayang sekali paper tersebut belum sy terjemahkan baik ke dalam Bahasa Indonesia, maupun Bahasa Inggris.
    Paper tersebut adalah penelitian ttg Komite Sekolah di beberapa sekolah di Madiun, Jakarta, Bogor, Semarang dan Pangkep tahun 2007.Penelitian tsb untuk mempelajari konsep partisipasi masyarakat dalam pengembangan sekolah di Indonesia. Sy menggunakan konsep Reimers dan Shaeffer untuk menilai bentuk partisipasi tersebut.
    Sebenarnya sy masih mengerjakan penelitian juga ttg kesadaran dan wawasan siswa dan orang tua ttg pengembangan pendidikan di daerah dan pengembangan sekolah dg mengambil sample 4 buah SMA di Madiun. Tapi tulisan itu belum selesai, sebab saya harus menyelesaikan dulu disertasi saya.

    Insya Allah akan saya kabari apabila paper tersebut telah selesai.Mohon maaf.

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